Oct.12 波乱の西日本F4最終戦を制したのはZAP。
シリーズ・タイトルは東京R&Dが獲得。
早くもF4西日本シリーズ最終戦岡山を迎えました。最終戦を前にして、東京R&DのRD10w/戸田K20を操る西本直樹が、第2戦鈴鹿ショートコースと第3戦岡山で優勝してポイントリーダー、ムーンクラフトMC-090/戸田K20を操る吉田広樹が、開幕戦岡山と第4戦鈴鹿で優勝して、ポイントランキング2位につけています。共に2勝を上げていることでも判るように、ポイント差は僅かです。しかし、西本直樹は吉田広樹の前でフィニッシュすればタイトルを獲得出来ますが、追う吉田広樹がチャンピオンをなるには、優勝がマストとなります。
タイトル争いを演じる2人にとって、無視出来ない存在は、8月から登場したZAP F108/戸田K20を操る土屋祐輔です。土屋祐輔にタイトル獲得のチャンスはありませんが、登場した第5戦鈴鹿で優勝すると共に、続いて登場した東日本シリーズ5戦ツインリンクもてぎショートコースでも、吉田広樹を破って優勝しています。
土屋祐輔が優勝した場合、吉田広樹は西本直樹を抑えて2位でフィニッシュしても、タイトルは西本直樹が獲得することとなります。
国土交通大臣杯獲得レースについては、今回のレースを加えても残り3戦となりました。
既にWESTが4勝していますから、JMIA F4が国土交通大臣杯を獲得するためには、R&DとZAPがあと2勝、ムーンクラフトがあと3勝する必要があります。(同じ優勝回数の場合は、国土交通大臣杯レースの上位のコンストラクターが獲得)ですから、ムーンクラフトにとっては、吉田広樹と共に、今回のレースで優勝することがマストとなります。
土曜日、岡山国際サーキットでは激しい雨が降りました。鈴鹿のF1GPの様にキャンセルさせたスケジュールはありませんが、各チームはウェットセッティングに精を出すこととなりました。天気予報によると、日曜日、津山地方は晴れの予報が出されていましたが、天気の回復が遅れる可能性もあるため、慎重にセッティングが行われました。
日曜日、予報通り天気は回復しましたが、午前9時15分から予選が行われた時点では、コース上の一部が濡れた状態でした。
F4の予選は、たった15分間で行われるだけでなく、予選で使用したタイヤで決勝レースをスタートしなければなりません。つまり、出来る限り少ない周回数で好タイムを記録する必要があるため、コースインのタイミングが重要となります。
セッションが開始されるとZAP F108の土屋祐輔は真っ先にコースインしました。しかし、コースの彼方此方が濡れたままで、最適なコンディションとは言えない状態でした。
コンディションを考慮すると、それでも土屋祐輔は好タイムを記録して期待を持たせましたが、途中、フロアパネルが外れるというトラブルが発生して走行を中止し、予選は2位に甘んじることになりました。
ほんの少し遅れて東京R&D RD10Wの西本直樹がコースインしましたが、まだコースの一部が濡れているため、思った通りのタイムアタックが出来ずに苦しむこととなりました。
ムーンクラフトMC-090の吉田広樹は、コースの一部が濡れていることを予想して、それより遅くコースインしたため、コースコンディションは向上しましたが、コースはタイムアップを目指したマシンが多く出ておりクリアラップを取るのが難しくなっていました。
どんどんコースが乾いてきたセッション終盤、西本直樹と吉田広樹がタイムを上げ、最終的に西本直樹がポールポジションを獲得して、今年の西日本F4シリーズ全6戦総てをポールポジションからスタートすることとなりました。
2番手に土屋祐輔、コースインのタイミングを遅らせた吉田広樹は、遅いクルマに引っかかって、3番手からスタートすることとなりました。
午後になると、どんどん気温が上昇し、午後2時決勝レースがスタートする頃になると28度を超えるようになりました。
フォーメイションラップで最初の事件が発生しました。
2番手からスタートする土屋祐輔は、もともとスタートを得意とするドライバーですが、フォーメイションラップの際、タイヤを暖めるためウェービングを繰り返していた時、リボルバーコーナーで、なんとスピンしてしまいました。クラッシュはありませんが、その結果最後尾からスタートすることとなりました。
決勝レースのスタートが切られると、ポールポジションの西本直樹と3番手スタートの吉田広樹は素晴らしいスタートを決めました。
土屋祐輔が居なくなって空いたフロントローイン側に向けて、2列目アウト側の吉田広樹は進路をイン側へ向けて加速しました。もちろん、ポールポジションの西本直樹もイン側へ向かいます。
1コーナーへの進入直前、30cmほど西本直樹が前でしたが、吉田広樹はイン側のポジションを確保しており、追い詰められた吉田広樹は、タイヤの半分をダートに落としながらトップで1コーナーへ進入し、2コーナーまでに完全に吉田広樹はトップを奪いました。
ここから吉田広樹と西本直樹は、チャンピオンの座をかけたテイルtoノーズの熾烈な闘いを繰り広げることとなります。
コーナーでは西本直樹の東京R&D RD10wの方が速いようですが、ストレートスピードは吉田祐輔のムーンクラフトMC-090の速く、西本直樹は何度も横に並びかけますが抜くことは出来ません。
最後尾からスタートした土屋祐輔は、スタートでまとめて4台を抜き、その後も、ライバル達を次々とゴボウ抜きしながら猛進を続けて、8周目には3番手までポジションを回復しました。
吉田広樹と西本直樹は熾烈なトップ争いを繰り広げているため、ラップタイムそのものは少々遅いようです。このままのペースであれば、レース終盤3台によるトップ争いが繰り広げられそうです。
11周目、バックストレート入り口のアトウッドカーブで西本直樹は勝負に出ました。進入で横に並ぶと、バックストレート立ち上がりで吉田広樹を抜きました。しかし、ストレートに入ると、ムーンクラフトMC-090がストレートスピードの速さを活かして吉田広樹が抜き返しました。
ところが、続くコーナーへ進入する際、トップを走るイン側の吉田広樹へ、アウト側の西本直樹が接触し、吉田広樹はバランスを崩して左側から大きくクラッシュしてしまいました。
このアクシデントによって、トップは東京R&D RD10wの西本直樹、2位に最後尾スタートのZAP F108の土屋祐輔となりましたが、フィニッシュまでの4周では追いつけず、そのまま東京R&D RD10wの西本直樹がトップでフィニッシュ、ZAP F108の土屋祐輔が2位に入りました。
ところがその頃、大会審査委員会では、スタート時と11周目のアクシデントについて審議が行われており、最終的に大会審査委員会は、共に相手のクルマをダートまで追い詰めた西本直樹の行為を、危険なドライブ行為と認定して、失格とする判定を下しました。
その結果、最後尾からスタートした土屋祐輔のZAP F108が優勝することとなりました。
このレースがスタートする前シリーズポイントトップだった西本直樹は失格となりましたが、シリーズポイント2位の吉田広樹もノーポイントですから、吉田広樹にとって悔しい結果ですが、西本直樹が2010年の西日本F4シリーズチャンピオンを獲得しました。
今回のレースの結果、国土交通大臣杯獲得レースの上位にZAPがジャンプアップしてきました。しかし、ZAPや東京R&Dが国土交通大臣杯を獲得するには、11月7日に行われる東日本F4シリーズ最終戦で勝つことが大きなポイントとなりますから、ますます目が離せません。
鈴木 英紀 著
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