Sep.06 東日本F4選手権シリーズ第5戦 もてぎ
鈴鹿での三つ巴の闘いから2週間、昨日ツインリンクもてぎの東コースにおいて、東日本F4選手権シリーズ第5戦が開催されました。
JMIA UOVAカーボンモノコックF4は、土屋祐輔がドライブするTeam LiaisonのZAP F108/戸田ホンダK20、土屋祐輔と鈴鹿で闘い3位に入賞した吉田広樹がドライブするTeam NaokiのムーンクラフトMC-090/戸田ホンダK20、小倉可光がドライブするParagon RacingのムーンクラフトMC-090/トムストヨタ3ZRの3台が参加いたしました。
F3と比べるとランニングコストが安いこともあって、F4を走らせるレーシングチームは、走行する機会があれば、若いドライバー達に練習を積ませるため、出来る限りサーキットで走り込んでいるようです。
2週間前、鈴鹿でデビューウインを飾ったZAP F108は、ニューマシンらしく、様々な初期トラブルに見舞われていることから、改良のためのテストや、パーツのテストが必要であるため、ZAP陣営は、テストと練習を兼ねた走行を行うこととなりました。
初期トラブルの撲滅に注力しているZAP陣営に対して、ムーンクラフト陣営は、もてぎに秘密兵器を持ち込んできました。
他のカテゴリーでも、富士スピードウェイのレースには空力仕様の異なったカウルを持ち込むことはよくあることですが、ムーンクラフトは、何とロードラッグボディを用意していました。
写真をご覧になると明らかですが、ハイダウンフォースボディの場合、せり上がっていたサイドポンツーン後部が、低く下がっています。
今回Team Naokiのマシンにだけ取り付けられ、吉田広樹によって、精力的に開発テストが行われました。
このように、ZAP陣営とムーンクラフト陣営は、共に土曜日まで開発テストを行うこととなったため、本当はどちらが速いのか?そのポテンシャルは未知数と言える状況でした。予選において、初めて、全力での闘いが繰り広げられました。
朝、比較的早い時間に予選が行われたこともあり、昨日までより、少々路面温度が低いようです。真っ先にコースインした土屋祐輔のZAP F108は、思ったようにタイヤを暖めることが出来ません。
一旦ピットに戻って、タイヤの空気圧を見直して、土屋祐輔は再びタイムアタックを行いました。F4の場合、予選で使用したタイヤで決勝レースをスタートしなければならないため、通常予選では、せいぜい5周か6周しか走りません。しかし、土屋祐輔は10周を走って1分23秒346を叩き出して、ポールポジションを獲得しました。
ZAP F108の土屋祐輔に10周も走らせた理由は、ムーンクラフトMC-090の吉田広樹が好タイムを記録したからでした。
昨日まで吉田広樹は、新しいボディの開発を行い、ギア比まで変更してセットアップを進めてきました。その努力の甲斐あって、吉田広樹も暖まり難いタイヤに手こずりながらも、8周を走って1分23秒493秒の好タイムをマークしました。最終的に土屋祐輔に抜かれてしまいますが、たった0.147秒差で2番グリッドを獲得しました。
日曜日、36℃の猛暑の中、決勝レースは行われました。
スタート直前、アクシデントが発生しました。スターティンググリッドへ着けるためにピットから走り出したMC-090のリアカウルが外れそうになっており、グリッド上でMC-090のリアカウルは止め直されました。
決勝レースのスタートが切られると、ポールポジションの土屋祐輔のZAP F108が絶妙のスタートを決めました。2番グリッドからスタートした吉田広樹は少々出遅れつつも、予選3位のNo.72金井亮忠の攻撃を抑えながら1コーナーへ飛び込みました。
ZAPは、もてぎとも近い筑波サーキットを拠点として、土屋祐輔も茨城県の出身であるため、もてぎへは大勢の土屋祐輔のサポーター達がやって来ていました。スタート前、土屋祐輔は「みんなに優勝をプレゼントする」と宣言してヘルメットを被りました。
その言葉通り、土屋祐輔のZAP F108は独走状態を築こうとしています。
ライバルの吉田広樹は、スタート直後No.72金井亮忠の接近を許しました。どうやらリアカウルに不具合が発生しているようで、集中力を欠いているようです。
リアカウルが脱落しそうなまま走り続け、それでも、中盤を迎える頃にはNo.72金井亮忠を振り切って、トップを走る土屋祐輔のZAP F108の追撃体勢に入りましたが、しかし、少々追い上げに移るタイミングが遅かったようです。土屋祐輔のZAP F108が、嬉しい2連勝を達成しました。
シーズン終盤までに、さらに数台のJMIA UOVAカーボンモノコックF4が登場しますが、3種類目のエンジンの登場も決定したようです。
ご覧のように、各コンストラクターも積極的に車体の開発を進めているようです。11月、FUJI SPRINT CUPにおいて開催される「国土交通大臣杯 F4レース・コンストラクター日本一決定戦」に向けて、あらゆる意味で盛り上がりを期待させるような、先行きの明るさを感じさせるもてぎのパドックでした。
鈴木 英紀 著
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