2010年のF4レギュレーションは、エンジン後面と後車軸間の寸法を260mm以下と規定するルールを撤廃したため、長めのベルハウジングによってエンジンを前寄りにレイアウトして重量配分を改善しつつホイールベースを延ばすことが可能となりました。 さらに東京R&Dはドライブシャフトに後退角をつけ、トランスミッションの後方でもホイールベースを延ばしましたので、慣性モーメントの低減にも大きな効果を発揮しています。 これによりRD10Wは、昨年までの旧時代のF4と比べると15cmも長い2,650mmのロングホイールベースとなっています。
前後の重量配分が前寄りとなることで、理論上、より大きなフロントタイヤを履いてもニュートラルな操縦性が可能となりますが、F4に統一タイヤを供給するヨコハマタイヤは、2010年よりF3と同サイズの幅広い200サイズ(従来は180)のフロントタイヤを供給します。 フロントタイヤが大きくなることは、2010年ルールに従ってマシンを開発するコンストラクターによって、大きなアドバンテージとなることでしょう。 (フロントサスペンションのサービスパネルを開けると、UOVAカーボンコンポジットモノコックを見ることが出来ます。 ) 東京R&Dは1/5スケールモデルを使って風洞実験を行いましたが、ドラッグ削減を最優先して空力開発を行ったようです。適合するギアレシオも間に合わず、何もセッティングを行っていないシェイクダウンの走行だけでは正確な判断は出来ませんが、ドライバーによると「剛性感があり素直な感じ」とコメントしているため、これからのセットアップに期待が持てそうです。
2010年に大きく変更されたF4レギュレーションですが、それでもまだ、安全性の面においては幾つかの不備が残っています。特に、モノコックはカーボンになったものの、フロントのクラッシャブル・ストラクチャーがアルミのままだったり、クラッシュした際タイヤとホイールが飛散しないよう、タイヤとホイールをマシンとつなぎ止めるホイール・ティザーや、ドライバーの頭部を強固にサポートするヘッド・プロテクターは定義が存在していません。 つまり、最新のフォーミュラカーでは装備されるのが常識となっている、これらの安全装備が規定されていません。
カーボン・モノコックが採用された現状において、このアンバランスさは是正すべきですから、2月12日に行われたF4協会の会議において、東京R&Dは、ホイール・ティザーやヘッド・プロテクターの採用を認めるよう提案した結果、F4協会もこれらのアイテムの採用を承認してJAFに申請することが決定されたようです。
しかし、2010年のレギュレーションに盛り込むには遅すぎるため、2010年に関しては、「ホイール・ティザーやヘッド・プロテクターを装着して走ることも可能」という判断となるようです。 これらのアイテムを装備した場合、重量が増え、しかも前面投影面積が増加することによって空力性能が悪化する可能性もありますが、東京R&Dでは、このようなリスクがあっても、高い安全性を優先して、ホイール・ティザーとヘッド・プロテクターの採用を決定したようです。 (上下のサスペンションアームに取り付けられた太いケーブルが、不慮のクラッシュの際、タイヤとホイールがクルマから飛散するのを防ぐホイール・ティザー ) (ボディと同じホワイトにカラーリングされているため分かり難いかもしれませんが、コクピット開口部には、ドライバーのヘルメットを強固にサポートするヘッド・プロテクターが設けられています。) 13日には、ライバルのF4も多数走行しました。古いアルミモノコックのF4の中には、アルミモノコックの上半分にカーボンファイバーのパネルを貼り付けて走行したチームも居ました。どれほどの効果が期待できるのか未知数ですが、こうしてF4コンストラクターがカーボン・コンポジットになじんでいくことが最も重要な効果であり、UOVA以外のモノコックの出現が待たれます。