Dec.02.2009
2010年に登場する2つのJMIA 2リットルF4エンジン
2010年、JMIAはF4に参入いたします。既にJMIAでは新しい工法によるカーボンファイバー・コンポジット・モノコックUOVAを公開しましたが、このUOVAを使って、現在幾つかのJMIA加盟企業がF4シャシーの開発に取り組んでいます。
2010年に施行される新F4レギュレーションは、カーボンファイバー・コンポジット・モノコックの使用を認めるだけでなく、エンジンも従来の1.8リットルから2リットルへと変更されています。
JMIAには、シャシーコンストラクターだけでなくエンジンビルダーも加盟していますから、F4参入を決定した際、当然エンジンについても開発/供給することを決めました。
ご存じのように、従来のF4マシンのほとんどはJMIA加盟企業の戸田レーシングがホンダ・インテグラに積まれていたB18エンジンをベースとして開発したエンジンを搭載していましたが、戸田レーシングでは、現在2010年レギュレーションに合わせた2リットルF4エンジンを開発中です。
戸田レーシングが開発中の2リットルF4エンジンは、ホンダ・シビックR等に搭載されているK20Aエンジンをベースとしています。
K20Aは、86mm×86mmのボア/ストロークから1,998ccの排気量を得て、シビックRの場合、8,000rpmで225psを発生しています。
スタンダードの状態で112.5ps/リットルと言う高性能エンジンですが、戸田レーシングでは、このベースエンジンをさらにチューニングすることによりF4への最適化を進めています。開発はほぼ終了しており、年内にスタートされるベンチテストを経て、来春早々から、ユーザーへの供給を開始する予定となっています。
東京R&D等多くのチームが採用を予定しています。
もう一つのJMIA F4エンジンは、ケン・マツウラレーシングサービスの協力によってトムスが開発中の、トヨタの新世代2リットルエンジン3ZRエンジンをベースとしたF4エンジンです。
戸田レーシングがF4エンジンのベースに選んだK20Aが、そのままでもレーシング・エンジンと遜色の無い高性能エンジンであるのに対して、トムスとケン・マツウラレーシングサービスが選んだ3ZRは、80.5mmのボアに対して97.6mmの超ロングストロークを組み合わせた低速トルク重視型のエンジンです。
ノアやプレミオ等に積まれる3ZRスタンダードエンジンは2種類あり、スロットルバルブを廃してバルブマチック機構によってコントロールする斬新なエンジンも存在しています。残念ながら、この新機構は規則で禁止されているため、カムシャフトは固定されたものを利用します。
3ZRエンジンは実用域での使い易さを優先して、97.6mmの超ロングストロークを採用しているため、レースエンジンとした場合、高回転で回すことが難しいと考える方が多いと思います。しかし、F4の場合、直径25mmのリストリクターの装着が義務付けられているために、いかに高回転型のエンジンであろうとも、最高回転数は約6,000rpm留まりとなって、それを超えると酸欠状態となってしまいます。
馬力とはトルク×回転数ですから、リストリクターにより回転数をアップ出来ないF4エンジンにおいては、いかに低回転域でトルクを稼いで馬力を得るかがキーポイントとなります。
コスト削減のためにリストリクターの採用が一般的である現在のレーシング・エンジンにおいて、ピーク馬力より全使用域においてパワーが維持できるフラットパワー型エンジンが主流になりつつあります。現在、トムスやケン・マツウラレーシングサービスが開発中の3ZR-F4エンジンは、まさにそのような新世代のレーシング・エンジンと言えます。
新春早々ベンチテスト開始と言うことですから、完成はシーズン開幕直前になるかもしれません。
トムス自身以外にも、数チームが3ZRを採用する見込みです。
鈴木 英紀